クイ-ンズランド州概要

令和3年8月13日

ケアンズ概要

略史

英国人の到来以前、現在のケアンズにはアボリジニのイディニ族、ジャプカイ族、ククヤラン族などが住んでいた。1770年英国の航海家ジェームス・クックが現在のグラフトン岬近くの海岸に上陸、その日が聖なる日曜日(Trinity Sunday)であったことから岬西方に広がる湾をトリニティ・ベイ(Trinity Bay)と名付けた。 1800年代以降、英国海軍により海岸線の測量調査が行われ、1876年には最初の移住者が定住した。その頃からこの地は約100km西のホッジキンソン河金鉱への物資・機材の供給拠点となる。なお、ケアンズという地名は1875年から1877年までクイーンズランド州第7代知事を務めたウィリアム・W・ケアンズに由来する。

ケアンズが本格的に発展したのは、マルグレイブ地区とラッセル河渓谷で大規模なサトウキビ栽培が始まった1882年以降であり、1886年には初めて船での砂糖積み出しが行われた。また同年、約40km南西のハーバートン錫鉱山へ交付用の生活物資を運ぶ鉄道の始発駅設置も決まった。当時のケアンズでは、サトウキビ栽培に加え牧畜や林業が主要な産業であったが、この鉄道敷設に伴い、錫鉱山への物流拠点として更なる発展を遂げた。

ケアンズは1885年に地方自治体となり、1903年に町、1923年に市としての行政形態をもつに至った。その後1995年にマルグレイブ郡と、2008年にはダグラス郡との合併が行われ、この時より両地域を含む行政区画をケアンズ地域(Cairns Region)と呼ぶようになった。
1984年の国際空港開港以来、ケアンズは国際観光都市として飛躍的な発展を遂げ、現在では世界中から年間約90万1千人の旅行者(うち邦人旅行者約11万人)が訪れている(2016年12月現在)。

地理・風土

ケアンズは南緯16度、東経145度に位置するクイーンズランド州最北部の都市である。同市は、ユネスコ世界遺産である世界最大のサンゴ礁グレート・バリア・リーフへの玄関口でもあり、同じく世界遺産に指定されている熱帯雨林地帯へのアクセスも発達している。ケアンズには、こうした大自然の多彩な魅力を目当てに世界各国から観光客が訪れる。 なお、日本との時差はプラス1時間で、サマータイムは導入されていない。

気候

ケアンズは熱帯圏に属し、日中は一年中夏服で過ごせる。5月から10月は乾季にあたり、最低気温が8℃から18℃、最高気温が25℃前後と大変過ごしやすい。11月から4月は雨季に入るため、平均気温が30℃前後、湿度が98%にまで上がり蒸し暑い日が続く。年間を通じて日差しが非常に強いため、日中外出する際には日焼け止めとサングラスが必需品。皮膚癌、熱中症などに注意する必要がある。

人口

ケアンズ市の人口は約16万人(2015年6月現在、ケアンズRegional Council ホームページより)で、クイーンズランド州最北部(Far North Queensland)の都市中最大である。また、ケアンズ市にはアボリジニやトーレス海峡諸島系先住民が他の都市と比べて多く居住しており、同市人口の約10%を占めている。在留邦人は約3600人である。

行政・経済

ケアンズ地域は10の選挙区に分かれ、全選挙区の中から選出された行政区画長(Mayor)と各選挙区から選出された議員(Councillor)が地域議会(Regional Council)を構成している。 ケアンズにおける最大の産業は観光業で、グレート・バリア・リーフや熱帯雨林といった大自然が観光客の人気を集めており、観光関連の日系企業も多数進出している。 もとよりケアンズ及び周辺地域はサトウキビの生産地として発展した経緯があり、精糖産業は現在も盛んである。またこれらの地域は果物や野菜の産地としても知られており、農作物は国内外各地に輸送されている。 その他、鉱業部門ではケアンズ周辺でボーキサイト、亜鉛、銅、ガラスの原料となる珪砂などが採掘されている。 文化交流に関しては、1969年にケアンズ市と徳島県日和佐町(現美波町)との間に姉妹都市関係が結ばれ、2006年には栃木県小山市とも姉妹都市合意が取り交わされた。ケアンズ市と日本の両都市との間では、現在も交流活動が行われている。

治安

ケアンズの犯罪発生率は他の地域と比べても決して低くない。最近では一人歩きの男女を狙った窃盗の他、自転車に乗っていた邦人が暴行を受けるといった事件も発生しているため、夜間の単独外出、特に人通りの少ない場所、暗い夜道の通行は避けたほうがよい。その他空き巣被害も多いので、家屋の施錠は怠らないようにする。
また、旅行者が盗難やひったくりに遭うことも多いため、旅行中はできるだけ大金を持ち歩かないようにし、現金、トラベラーズチェック、カード類は別個に持つなど工夫する。特にビーチやダイビングスポット周辺にはロッカーが無い場合もあるので、貴重品はホテルの金庫などに保管し、携行する物を最小限にとどめるのが望ましい。

交通・運輸

現在ジェットスター便がケアンズ~成田間を毎日、ケアンズ~大阪間を週6便運行している。日本からの到着便は早朝、日本への出発便は昼に集中している。最新のフライト発着時間は、フライト情報センターで確認できる。空港から市内まではタクシーで約15分、料金は20ドル程度前後(夜間割り増しあり)。 鉄道はケアンズ市内からキュランダとブリスベンに開通している。ケアンズ~キュランダ間は観光列車が毎日2本(片道約1時間45分)、ケアンズ~ブリスベン間は列車が週6本(片道約25時間と約30時間の2種類)運行している。 市中心部のシティ・プレイスからケアンズと近郊との間を結ぶバスが発着しているが、夜間と週末には運行台数が少ないので、タクシーを利用する方がよい。 レンタカー業者は多数あり、一日40ドル前後からレンタル可能。豪州の運転規則では車両は日本と同様左側通行であるが、ラウンド・アバウトと呼ばれる信号の無い円形交差点での交通規則をはじめ、日本とは異なる点もあるため注意すること。

主な見所

(1)グレート・バリア・リーフ クイーンズランド州沖合一帯に広がり、北はトーレス海峡から南はバンダバーグ市沖合まで約2,000kmに及ぶ世界最大のサンゴ礁として知られ、ユネスコ世界遺産にも指定されている。美しいサンゴの周りに熱帯魚が群がる光景はダイバーの憧れの的で、ダイビングのメッカとなっている。海岸沿いの近海には600余もの島々が点在しており、ケアンズから船やヘリコプターで外洋のサンゴ礁(アウター・リーフ)や、各種リゾート施設の備わったグリーン島、フィッツロイ島、ダンク島などを訪れることができる。

(2)キュランダ
ケアンズから車で約45分の小さな村。キュランダへはスカイレールと呼ばれる南半球最長のロープウェイや、レトロ列車が運行している。どちらもダイナミックな滝(ただし雨季のみ)や世界遺産の熱帯雨林を展望できることから、観光客の人気を呼んでいる。キュランダ村には野蝶園、コアラ園、地元アーティストの作品を扱ったギャラリー、マーケットなどがある。

(3)アサートン高原
ケアンズ市内から車で約1時間半。広大な草原では熱帯雨林、牧草地、果樹園、火口湖、数多くの滝など、変化に富んだ景観が楽しめる。また大ウナギや、有袋類の一種で世界でも数の少ないロック・ポッサムなど、珍しい動物も見られる。その他、バードウォッチングを楽しむ人も多い。

(4)フレッカー植物園
ケアンズ北西部にあるこの植物園では、野生のヤシ、シダ、ランなど、色とりどりの熱帯植物を見ることができる。市中心部からのアクセスも良い。

(5)動物園
ケアンズ・ワイルドライフ・パークなどの動物園では、コアラ、放し飼いのカンガルー、ユニークなワニやヘビのショーも観ることができる。また、有料でコアラを抱いて記念写真撮影ができる。

(6)アボリジニ・カルチュラルセンター
市内から車で約20分、キュランダの麓にはジャプカイ・アボリジナル・カルチュラルセンターがあり、オーストラリアの先住民アボリジニの生活文化、独特の音楽や踊りを観ることができる。

(7)ポート・ダグラス
ケアンズから車で約1時間。ホテル、ゴルフ場、レジャー施設のほか、レストラン、セレクトショップ、土産物店などの入ったショッピングセンターもある。また、ダイビングやシュノーケリング、半潜水艦といったグレート・バリア・リーフならではのアトラクションが楽しめるエイジンコート・リーフへのクルーズ船が発着している。

買物

ケアンズ市内には、ケアンズ駅に隣接するケアンズ・セントラル(大型スーパー、百貨店、専門店約200)をはじめ、ピア・マーケット、オーキッドプラザなどのショッピングセンターがある。またエスプラナード通りのナイトマーケットや免税店、ジュエリー店、土産物店は年中無休で夜遅くまで営業しているところが多い。 レジャー

(1)ゴルフ
市内および近郊に公営、市営のゴルフ場が数カ所ある。

(2)マリンスポーツ
市内には泳げるビーチが無いため、海水浴には北部郊外、車で約15分から30分の距離に点在するビーチを利用する。強力な毒をもったスティンガーと呼ばれるクラゲの時期には特に、スティンガーネットと呼ばれるクラゲ除けの網を張った遊泳海域内で泳ぐこと。 グレート・バリア・リーフへは様々なクルーズ船が運行しており、目的地の島でダイビングやシュノーケリングが楽しめる。ダイビングライセンスの無い場合には、体験ダイビングも可能。

(3)その他
ケアンズ周辺各地でスカイダイビング、熱気球、乗馬、ラフティング、釣り、ヘリコプター遊覧飛行などが楽しめる。